ついに、たどり着いた。あっ、屋上にマルヨンが見えてる。
 淡々と書いてるけど私、実は昨晩はよく眠れなかった。

 勢いでここまで来ちゃったけど、じゃあハセガワに行って何するの? どうすりゃいいの? 仕事しているところに厚かましく入っていって、ものすごく迷惑だよね?・・・ドキドキ。偉そうなこと言ってるけど、会社勤めの経験も満足になく(バイト程度)、社会に関わるということをあまりしたことのない私は、ようするに「世間知らずのオバハン」そのもの。

 気後れする気持ちがどんどん膨れ上がり、焼津に近づくにつれどんどん気持ちが重くなってくる。
 あんなに行きたくて仕方なかったのに。どうしてなんだろう。
 JR焼津駅でタクシーに乗って「プラモデル作ってるハセガワさんとこへお願いします」と言うと運転手は「ああ長谷川模型ね」と、すぐに連れて行ってくれた。
 メーターは一度も上がらなかったと思う、えっ、もう着いた!? 早すぎるぅ。

 でも私、今回来るにあたり、絶対に自分一人で行くことに決めていた。
 誰かに頼んで連れて行ってもらうことはしない。それだけを決めていた。
 単独行することに意味がある。何となくそんな気がした。

 今回のハセガワ訪問は、取材ではありません。
 会社に対しての訪問だから自動的に公式ってことになるのかもしれないけれど、お知り合いに会社を見せていただいた。そんなふうな訪問です。

 綺麗に掃除された玄関をええいままよ!!と入ってゆき、受付の女性に
 「おはようございます、あのあのあの・・・・専務と約束をしているのですが・・・・」
 「はい」と微笑んで私を促す女性社員の顔を見て、あっそうだと気が付き、慌てて自分の名前を告げる。

 そのまま、二階の会議室に通された。
 えっ、まるで本物のお客様みたい。どうしよう。冷や汗。
 数分もしないうちに長谷川専務が現れ、「こんなところで二人っきりになっていいのか状態」になるけど、たぶん専務も少々居心地悪かったのでしょう、すぐに腰をあげて「じゃ行きましょう」

 まず案内されたのは、ハセガワの見本製作をほとんど一人でこなしている戸部さんの工作室。
 ああ、この扉の向こうに入ることができたなんて。
 夢みたいです。

 ここまでやってくるまでの長い道のり・・・今回の旅、そしてこの数年のこと。
 2007年のJMC大阪会場に初めて見学に行き、何も知らないド素人が専務(当時は常務でした)に突撃インタビュー(汗、一応スケビに書きました)、あのとき会場に来ていた嘴頼さんやプラ子さんにも初めてお会いした。
 あれから・・・静岡ホビーショーやJMCで、専務をはじめハセガワの社員の方々ともお話するようになり、ご縁を感じるようになったこと。専務や社員の方々の人柄などに触れるにつけ、どんどんその魅力に虜になっていった。

 なぜ来たのかと言われると、変な答えと思われるかもしれないね、でもハセガワの人達は普段どんなところで仕事してるんだろう・・・と思ったんです。それを見てみたかった。

 戸部さんのデスク。つまり作業場。

 あんまり綺麗に片づけられているので思わず
 「残念~デカール貼ってるとこを見たかったです」と言うと、
 「ちょっと遅かったね、今朝ひとつ仕上げたんだけど」と見せてくれたのは、「モーレツ宇宙海賊弁天丸」の痛いデカール替え!?
 私よくわかんないアイテムですみません。

 たぶん私が来るのできれいに片づけてしまったのでしょう。
 テストショットが転がってたらもらってこようなんて甘い考えは、簡単に打ち砕かれた・・・

 工作室は結構広いスペースで、ここがどういう場所なのかは説明されなくてもわかる。たぶん、「見本を製作する人」はハセガワでも特別な人なんじゃないかと思う。

 呼ばれて部屋に入ってきた、熊野筆などツール担当の人と四人で話していると、何となくリラックスした気分になる。ついついタメ口をききそうな自分を抑える。
 戸部さんがこれまでに作った見本はすべて保管してあるそうです。この部屋だけでもものすごい数。
 写真の残骸は、零戦の破片。どのへんかわかるかな?

 持参した72のF-104J(フィンランドの架空塗装)を見てもらう。またまた冷や汗。でもハセガワに行くのだったら、作品持参しないわけにはいかないでしょ。
 「置いていってよ」と言われ、びっくり。「ホビーショーのときにでも持っていくからさ」と、戸部さんはこともなげに言うけれど・・・
 「あとでじっくり見させてもらうからさ~わはは!!」

 ああ~ますます冷や汗。恥ずかしいけど、せっかくなので置いていくことにした。

 スジ彫り復活はどうやってしているのですか、と聞くと見せてくれた道具。

 Pカッターを自分で削ったもののようです。
 ガイドはモデラーズの伸びるマスキングテープ(私も持ってるけど、ガイドとしては使ったことがない)。

 ちなみに、戸部さんが使っているからといって、ハセガワではみんなこの方法でやってるわけではなく、それぞれやり方は違うようです。
 金属の物差しなども使うそうです。あともちろん、金属のテンプレートも。
 カッターマットの古びた感じが、何気なしに貫禄。

 私「あのぅ、デカール貼るときは、手で貼るんですか?」
 戸部さん「手で貼らないで、どうやって貼るの!?」

 一同、爆笑・・・・
 私「だからその、手というか、指に水つけて動かしたりするんですか? ハセガワのインストにはそう書いてあるけど」
 戸部さん「そうだよ」
 いつも思うんだけど、上手な人は何でも簡単そうに説明するんだけど、こっちがそれをやろうとすると上手くいかないのはどうしてだ!?
 工作机など見ていたら、なんだか私も作業場が恋しくなってきた。おおっ、モデラーだねぇ。

 戸部さんの在庫。そんなの写真撮っちゃだめだよ、と言われたけど。

 職場に在庫があるって、面白い職場だよな~って思っちゃう。
 隣の部屋にも工作室があり、就業時間後の社員が、そこで好きなものを作ったりしているそうです。

 私が帰ろうとして別れの挨拶を告げたとき、戸部さんは零戦らしきものをいじっていた。何か遊んでいるようでした・・・

 専務の机。

 写真は撮っていませんが、設計や箱絵のデザインしたりデカール作ったりしているところも拝見しました。
 そして念願の、AH-64Dの設計者にもご挨拶しましたっ!!
 実は今年の静岡ホビーショーでもお会いしていたんですが、そのときはまだその人の設計したものを何も作っていなかったのです・・・。そしたらたまたま最近作ったアパッチがその方の設計したキットだったのです!!

 「パーツが多かったでしょう」と微笑みながら言われました。
 「確かに多かったけど、すごく達成感ありました。ローターのとことかすっごくよかったです!!」とお伝えしました。
 「ヘリはあまり売れないんでしょうか」とお聞きしますと
 「72は結構売れるのですけどね」ということでした。そういえば痛コブラとかも出てたよね。

 なんか風邪気味みたいで、今回も喉が痛そうでしたが・・・実はここだけの話、風邪気味の男ってセクシーなんだよね。ふふ。
 私、高校生の頃気が付いたんだけど、もうたまらないんです。ああ、ヤバイ。それに私、あなたの設計したアパッチを作りながら、イケナイことばかり考えていたんですぅ・・・なんて、頭の片隅で思い始めると、なんかますますヤバイっ!!
 周りの人は静かに仕事してるのに、ほんとにもう。

 お話した時間はほんの少しでしたが、お会いできてうれしかった。
 というわけで、また来なくちゃいけないな、と思った私でした。今度来たときは焼津に泊まって、それからぁ、うふふ・・・

 ほかにもいろいろ、美女にしか見せていただけないモノとか見せていただきまして(謎)、楽しい訪問は終わりました。

 それから、専務とお昼をご一緒させてもらいました(写真は専務の在庫・汗)。
 静岡ホビーショーでお弁当を一緒に食べるのとはまた違って、とっても楽しかったです。焼津のマグロですよ。

 私がまだ半分しか食べていないのに、専務はあっというまに全部食べてしまいました。
 「食べるの速くてすみません」←律儀に謝る専務

 いやいや、いいんです、私が遅いだけですから。その食べっぷりなら、ハセガワも安泰ですね。
 男はちゃんと食べないと、戦えないでしょ。

 何となく、はるばる九州から孫に会いに来たばあちゃん、みたいな気持ちになりました。
 「お前も、立派になったねぇ」なんて。

 女ってみんなそうかどうかわかりませんが、一緒に食べた相手が、どれだけ食べるか、どう食べるか、ということを結構観察してしまうものなのです。そんな何気ないことから色んなことがわかったりするんだよ。

 新製品のこととかハセガワの今後の展開とか、私には難しいことは何も聞けませんでした。
 ただ、ひとつだけ、そう「九州のばあちゃん」ですら気になってることはありました。
 JMCです。

 「開催時期は未定であるが、再開したいと思っている」

 ということでした。必ず再出発したいと言われました。
 それ聞いて、ばあちゃんは安心したよ。じゃあね、お前も元気でね。体に気を付けて・・・・・

 ・・・誰がばぁちゃんですかい!?

 というわけで、お忙しい中、私を快く迎えてくださったハセガワの方々に感謝いたします。
 素晴らしい思い出をいただきました。