作業部屋でコーヒーを飲んでいると、誰かに呼ばれた気がした。

 泣き虫で少年のように傷つきやすく、虚勢を張っているけれど本当は弱っちい、そんな53歳の38(t)がお願いだから自分を本当のカタチにしてくれと言っている。・・・・って、その物語なんなんですかと思うでしょうが、何となく38(t)にはそんな雰囲気がある。
 女から見ると、この人にはとことんつきあってみよう、と思わせる何かがあるのね。

 というわけで38(t)とのつきあいも四輛目、なんだかんだ言って私も「同じものばかり作る人」になってる。
 マケット、ドラゴン、トライスターと遍歴を重ねてきましたが、結局いちばん最初に寝たマケットが一番問題児だった。

 このイタレリは戦闘室の底のモールドまで再現されている。ドラゴンほどはパーツが多くなく、ほどよいパーツ数ってとこがタミヤみたい!?かな、もう少し作ってみないとわかんないけど。

 履帯も全部バラバラではなく、タミヤみたいな部分的バラバラ。これは助かる。
 全部バラバラはもう作りたくないよ。

 足回りから作り始めるけど、同時に砲塔も作ろうかなと思う。
 飛行機と違ってパーツが多いので組み立てるのが楽しい。
 飛行機ばっかり作ってると、組み立ての楽しさは殆どなくて合わせ目消しの厳しさばかり感じられるし、たまに、ゆる~く戦車を組み立てたくなる。

 エアブラシのスイッチを入れて塗装を始めたとたん、電話が鳴った。
 ええい、もう、今頃電話してくるのは母だろうか。仕方ねぇなあ。
 私「もしもし」
 若い男の声「●●の××と申しますが、現在お客様のインターネットはNTTの光通信でなさってますか」
 私「はい・・・」

 なんだ、セールスかよ。確か一昨年くらいに光にしたから、もう変える必要はないな。

 私「あのね、私いま塗装してるんです」
 若い男の声「はぁ、塗装、ですか」
 私「そう、塗装してるの。だから忙しいんです、またにしてください」
 若い男の声「わかりました、後日また、お電話差し上げます、それでは失礼いたします」

 私がなにを「塗装」してると思っただろうか。

 今日の夕暮れ。

 さいきん毎日、五時過ぎになると、ワインとチーズを持って二階の窓辺に座って空を見る。
 夕暮れは毎日同じように思えて、実は全然違う。
 色も雲の様子も。

 今日はどんどん空が赤くなっていった。
 写真を撮った直後、ねぐらに帰っていくカラスが横切った。
 そのあとから、ふいに旅客機が飛び出してきた。福岡空港から東に向かう飛行機がここを通る。

 そして、あたりはとても静かだった。
 私の横にはクモが一匹、巣を張っていて、黙って一緒に空を見ていた。

 空を見ていると、何があろうと、もう少し頑張ってみようかという気持ちになる。