本5

 夏は、日本人には過去のことが気になる季節である。

 読みかけの「特攻隊振武寮」(朝日文庫)を読んだ。陸軍の振武寮とは、太平洋戦争末期、福岡市にあった特攻の生き残りを集めて精神教育(という名の虐待)をする施設である。まあ、〇〇野郎が出てきますよ。そして、最後の鎮魂の旅に涙。だってね「なんであなたは生き残ってうちの息子は死んだのですか」と思うよね、親は。特攻隊って、死んだ人はもちろん無念・悲劇だけれども、生き残った人にはさらに地獄が続いているの。そういう人がどうやって戦後を生きたか、私なんぞの想像を超えている。
 ところで、海軍最後の特攻は大分飛行場から飛び立ってるんだけど、誤って鹿屋と書いているので、「それ、違うっちゃ!!」と思わず椅子から立ち上がった。しかし編集の人もに気づかないのかなあ、悲しいな。私の持っているのは第一刷なので、その後訂正されたかもしれない。

 しかし読みかけってダメですね。たいてい最初から読む羽目になる。忘れちゃうもんね・・・。

 「帝国軍人」(角川新書/戸高一成、大木毅対談)
 これメッチャ面白かった。興味深い話満載で超おすすめ。ここを読んでいる人は私なんかよりずっと戦史・戦記などには詳しいと思うので、そういう人なら更に面白いはず。この二人が出会った元軍人の話、彼らにまつわる話、作家・研究者の話も出てくるよ。
 改めて思うのは、我々は戦争体験者に直接話をきくことのできた最後の世代なんだね。

 「歴史というものは無残なもので、かつて存在した世界にあった、その無限とさえ思えるほどのドラマの中の、悲しいほど僅かな事象しか後世には伝えられないものなのだ」(戸高一成 あとがきより)

 歴史好きには胸の締め付けられるような言葉。
 ちなみになぜあの戦争が始まったか、いまだにはっきりとはわからないんだね。うーむ(ただしそういう謎について考えるのも楽しみではあるけど) そういう、これまで明るみに出なかったことが、まだ今後世に出てくる可能性もある。そのときが待ち遠しい。