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 さあ、謎が謎を呼ぶバイクの製作記だ(笑

 エンジンにはとりあえず三か所コードをつける指示がある。もちろんタミヤ様の用意したチューブ状のコードをタミヤ様の指示通り切って取り付けるだけだから簡単である。手前のは少し太く、奥側のは少し細め。とにかくタミヤ様の言う通りやっとかないと後で大変なことになるので、必ずインスト通りの順番で組み立てるのが大事。零戦作ったときに学んだことがここで 役立ってるね。

 しかし、取り付けたはいいが、このコードどこに行くのだろう!?

 そう思うとにわかに不安になった。狂ったようにインストをめくって「ここでもない、そこでもない・・・ああっ、これ一体どこなんだぁ~!!」と探すがなかなか見つからずパニックに襲われる。謎のウイルスへの恐怖からトイレットペーパーを買いに走った主婦達もこんな気持ちだったのだろうか。

 やっと発見して胸をなでおろす(今気が付いたけど、胸をなでおろすって、ちょっといやらしい動きですね)
 で、これはラジエーターから繋がっているらしい。そうか、ここを冷却水が通ってくるのか!! すごいなぁ~、ひとつ発見。

 ところで、私とバイクとの出会いなんですが、学生時代、年下の友人の友人でバイクに乗ってる男がいました。いつもツナギを着てましたね。

 ある日、学内でバッタリ会った彼はポケットから何か小さな包みを取り出したんです。
 「あの、これ・・・こないだ足摺岬に行ったんでお土産です」と私に差し出すではありませんか。
 「えーっ、足摺岬に行ってきたの?」
 「はい」
 「バイクで?」
 「はい」
 「一人で?」
 「はい」

 そのとき知りました、バイク乗りって一人で足摺岬に行ったりするんだと。
 お土産はもちろんもう失くしてしまったけど・・・今つくづく思うのは、あのとき、「いいなぁ~私も連れてって~」と言ってみるべきだったんじゃないでしょうか。「足摺岬は無理でもどっか近くまででいいから・・・バイク乗せてほしいなぁ~」とか。
 たぶんね、無口な彼は自分から誘えなかったんですよ、でも足摺岬で海を見つめながら私のことを思い出し「あー、いつかきららさん連れてきたいなあ」などと思ったに違いない。
 嗚呼、もったいないことをしたなぁ。なんて私は情緒を理解しない女なんだろう。男心の機微を知らない女なんだろう。取り逃がした魚は大きい。

 なんてのは妄想膨らませすぎですが、結局どんなバイクに乗ってたかは覚えていない、ただそいつの顔だけは覚えてる。バイクに乗る男っていい感じなんだなあということだけは。